わたしたちオーパーツ

まあ、活躍しているから名前は知っている、くらいの認識だっただろう、お互い。 最初に私たちが顔を合わせたのはパリの美術館だった。「破天荒」という言葉をそっくりそのまま擬人化したような人間、見た目も派手なら中身はもっと派手で、そして彼のつくる芸…

日常と地球の額縁 5

次の日私はいつもよりも早く登校し、普段話すようなこともない真面目な生徒たちにも微笑んで挨拶をして、そして、小南の悪行を打ち明ける予定だった。 夏休み明け以降、学校に行くのが憂鬱になった。可愛いのも、勉強ができるのも、人に好かれるのも、全部小…

日常と地球の額縁 4

「小南柚寿? 知り合いだけど……」 渋谷翔は、喫茶店に飾ってある小さな置物に目を落とし、そう言った。 私はわかっていた、小南ほどの美人なら他校にも存在は知れ渡っていると。そして、夏休み明けに急に市内から転校してきたということは、何か洒落にならな…

日常と地球の額縁 3

単調な毎日。セーラー服の紐を結ぶ。前までは姿見の前に立ち、一ミリの乱れもないように、何十分もかけて支度をしていたけれど、もうその生活は終わった。朝ご飯を食べ終えて、歯磨きをしながら目を擦る。化粧は、今日は別にしなくてもいいや。 今でも少し慣…

日常と地球の額縁 2

女学生しかいない学校を選びたいけれど、ゴミ捨て場でかつての友人らに罵声を浴びせられたことを思い出すと、女子も嫌、もうみんな嫌、となる。 夏休みが始まる前に、私は学校を辞めました。 小南の成績ならどこでも編入できるだろう、と先生は言った。幼馴…

日常と地球の額縁 1

小南柚寿が憎い。あいつに私は、全てを奪われた。 夏休みが明けて登校したら、いつも通りの風景が広がっていた。地方政令都市の、どこにでもある女子高校。開いた窓、夏服のセーラー服。お土産を交換しあうクラスメイトたち。二年三組。私が扉を開く、その瞬…